ネイティブ広告とテレビドラマの親和性

2016年11月4日に日本インタラクティブ広告協会(JIAA)がホームページ上で『ネイティブ広告ハンドブック2017』(以下 : ハンドブック)を公開した。
その内容についてSNSやブログで度々話題になっているが、今回はハンドブックを読む中で感じたネイティブ広告とテレビドラマの親和性について触れてみる。

ネイティブ広告の定義

本題の前にネイティブ広告の定義について説明する。
JIAAが公開したハンドブックにもネイティブ広告の定義について書かれているが、その引用元であるJIAAの『ネイティブ広告の定義と用語解説』では以下のように定義されている。

デザイン、内容、フォーマットが、媒体社が編集する記事・コンテンツの形式 や提供するサービスの機能と同様でそれらと⼀体化しており、ユーザーの情報 利⽤体験を妨げない広告を指す。[*1]

本記事ではこの定義を元に『ネイティブ広告とテレビドラマの親和性』について言及する。

ネイティブ広告はインターネットだけのものではない?

一般的にネイティブ広告といえば、主にネット上のメディアにおいて他の記事などと馴染んだ広告という印象が強いが、ハンドブックの最後の章に書かれている『 「ネイティブ広告」の今後について』では国外の事例としてテレビにおけるネイティブ広告の広がりについて紹介されている。
以下、『ネイティブ広告ハンドブック 2017』から引用。

欧米では、ネイティブ広告がインターネットの世界のものだけではなく、 ほかメディアへの展開としても注目され始めている。例えば、テレビのようなメディアにおいても、「ネイティブ広告」が実験的に始まっている。そのひとつが ViceMedia が 2016 年春にスタートさせた Viceland におけるネイティブ広告アプローチの広告だ。Viceland では 30 秒の定形の広告枠の代わりに番組の中でブランドの商品をシームレスに紹介するというアプローチをとっており、一方で番組そのものがスポンサードされているというのは明示的になっている。この Viceland の手法、実は日本では 1960 年代に放映されていた『てなもんや三度笠』の手法とほぼ変わりがない。[*2]

欧米では他のメディアにおいてもネイティブ広告の活用が進んでおり、さらに国内においても古くからその手法は存在していたと紹介されている。
この文章を読んで「日本のテレビドラマでもネイティブ広告が活用されてるのではないか?」とふと頭によぎった。

テレビドラマにおけるネイティブ広告の事例

そこで、個人的に印象に残っている事例をいくつか紹介する。

ルーズヴェルト・ゲーム

真っ先に思い出したのが2014年に放送されたTBS系ドラマ『ルーズヴェルト・ゲーム』で放送されたCM。
ルーズヴェルト・ゲームは企業と野球部が密接に関わっているドラマであり、その物語を活かしたコラボCMが放送された。

上記2つのCMでは実際にドラマに出演している俳優がCMにも登場している。
さらには、日本生命東芝ともに会社として社会人野球のチームを持っていることからCMの内容もテレビドラマの世界観と重なる部分があり、まさに『ユーザーの情報利⽤体験を妨げない広告』つまりネイティブな広告という印象を受けた。

逃げるは恥だが役に立つ

ルーズヴェルト・ゲームは2年前のドラマだが、現在放送されているドラマで印象的なのは『逃げ恥』でのCM。
こちらでは日産ジュークとのコラボCMが放送されている。

ルーズヴェルト・ゲームと同様で、ドラマの内容とリンクした形で映像が作られている。
逃げ恥ならではのCMの作り方として、CMに入る前のストーリーとCM上のストーリ・撮影場所・セリフがドラマとシームレスに繋がっていること。
もちろんこの日産ジュークは実際のドラマでも使われており、「誰がどの背景でどの車のどの座席に乗り…」というコンテクストがCMでも上手く使われている。

逃げ恥といえば恋ダンスだが、まるでミュージックビデオのような映像をエンディングで流すのもある種のネイティブ広告といえるのかもしれない。

https://www.youtube.com/watch?v=dXJVKZhU5jowww.youtube.com

主題歌の宣伝としてドラマの合間に15秒のCMを流すよりもよっぽど効果的で、視聴者もネイティブにコンテンツを体験できる。
この手法は他のドラマでも採用されているが、これほどまで大きく成功したのはやはり 俳優/ミュージシャン というマルチな活動をしている星野源の存在が大きく関係しているのだろう。
楽曲、歌詞、ダンス、演出、そして星野源の存在がこのコンテンツをよりネイティブにしてると推測できる。

サイレーン 刑事×彼女×完全悪女

自動車のCMといえば2015年に放送されたフジテレビ(関西テレビ)系ドラマ『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』でもコラボCMが放送されていたのが記憶に新しい。
こちらのCMもドラマの世界観をそのままにCMが作られていたので、まさにテレビドラマにおけるネイティブ広告といえるだろう。
先ほど紹介したコラボCMと同様で、このドラマのCM枠のためだけに作られてるのが大きなポイント。

https://dport.daihatsu.co.jp/movie/siren/dport.daihatsu.co.jp

地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子

こちらも現在放送中のドラマ。
主演である石原さとみが出演しているCMがドラマの合間に放送され、そのCMに続く形で同じくドラマ出演者である菅田将暉がCMに登場する。 ただ、このCMに関してはドラマとの関連性はないためネイティブ広告とは言い難いが、このドラマで注目すべきなのはファッションの見せ方。

https://www.youtube.com/watch?v=I_uQjTr-gXUwww.youtube.com

ドラマの途中にファッションにフォーカスを当てたシーンが何度も差し込まれ、Instagramでも拘ったアプローチが確認できる。

悦子のお洋服🍀 昭和レトロ🎀 #地味スゴ #5話 #河野悦子

【公式】水ドラ『地味にスゴイ!』さん(@jimisugo)が投稿した写真 -

2014年に放送されたフジテレビ系ドラマ『失恋ショコラティエ』でも同様の現象が起きていたが、ドラマの放送ごとに石原さとみが着用していたブランドや衣類が様々なメディアでまとめられているのが印象的。
今回の事例に関してはスポンサーはないようだが、ネイティブ広告を活用する上でのヒント(というよりプロダクトステイトメントに近いが…)が隠されているのかもしれない。

テレビドラマの強み

ネイティブ広告を活用する上でのテレビドラマの強みはストーリーがあること。
役者がドラマと同じキャラクターを演じ、かつドラマのジャンルと相性のいい企業や商品をCMとして放送した場合、ユーザーはテレビドラマを見るモチベーションを保った状態でCMを見ることができる。
つまり「ネイティブ」な体験ができるということである。
体験がネイティブなため、おそらくスキップされたりトイレタイムになる可能性が低くなることから、インターネット広告におけるネイティブ広告と同様で大きな効果を得られることが期待できる。
また、ハンドブックでも語られているディスクロージャーについても、上記のようなストーリー性や役者というテレビドラマの強みを活かすことで、「ディスクロージャーがあることによる機会損失」はテレビドラマのネイティブ広告においては生まれにくいのではないかとも感じた。

また、バラエティ番組やトーク番組でもネイティブ広告に近いアプローチ(司会が番組と同じセットで商品を紹介するCM)を見かけることはあるが、テレビドラマほどのネイティブな体験は実現できてないように感じる。
これもストーリーの有無による違いなのかもしれない。

まとめ

テレビドラマの特性を活かすことで『CM(コンテンツ)を体験するまでの環境作り』が容易となるため、インターネットでは成しえない広告体験が可能となる。
ことから、あらゆるメディアの中でも特にテレビドラマはネイティブ広告と親和性が高いのではないかとの考えが生まれた。
今後はさらにテレビドラマの世界にもネイティブな広告が広がってくるのかもしれない。